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作者の研究について

 作者は「分類学」という分野の研究をしています。何をする学問なのか、どんな意義があるのかをだいぶ端折りながらですが紹介します。
分類学とは
 この地球上にはたくさんの生き物がいます。それらについて、区別できるものに名前をつけて、それぞれの関係を整理する学問が分類学です。名前をつける基本となる単位が「種 (しゅ)」です。これまでに見つかっている種とは違う特徴をもった種を新種として発表することや、逆にこれまで別の種と考えられていたものを検討しなおして同じものにまとめること、そしてどの種とどの種が縁の近い関係にあるのかを考えることなどが、研究の主な内容です。
 上に書いたように、物を作ったり技術を作ったりする分野ではないので、分類学はとてもお金になりません。「そんな研究してどうするの?」と聞かれた時に、作者は次のように答えるようにしています。
意義
 私たち人間は、食糧や医薬品、衣類、住居、染料など非常に多くの面で生き物に由来する資源を使って生きています。生き物はみなどこかでつながり合っているので、資源として利用できる特定の生き物だけがいてもうまくはいかず、それを取り巻くいろいろな生き物がいるということ (生物多様性) が大切と言われています。
 
「いろいろな生き物がいるかどうか」を評価しようと思ったら、それぞれの生き物に名前がついていないといけません。また、ある地域にいる種類と別の地域にいる種類が同じものかどうか、などもわかっている必要があります。こういうことをやるのが分類学です。言わば、資源を管理する上での基礎となる「種の情報」を整備する役割があります。ひとつひとつの研究の功績は決して目立つものではありませんが、何百年も積み重ねることで地球の生き物の全貌を解明することを目指しています。
 
 
 もっと身近で低俗な意義を挙げると、「生き物の名前がわかると楽しい」と思うのです。みんながそうだとは思いませんが、野外で見つけた生き物の名前がわかると、何か言い表せぬ快感があります。「名前」があることで人間はものごとを的確に理解することができますし、また愛着が湧きます。そういう「名前を知りたい人」たちの欲求に応えるのはまさに分類学の役割と思います。
 
 
命名の例
 新種を発表する際は「この種はこういう特徴をもっており、これまでに知られているどの種とも区別することができるので、新たに名前をつけてここに新種として発表する」という論文を出版するとともに、「この個体を種の基準にした」という標本、模式標本を博物館に収めます。「これは新種かも」というものを見つけたら、隅々まで詳細に観察をし、近い仲間でこれまでに発表されている種を論文や模式標本などで全て調べ上げます。そしてそのいずれとも区別できることがわかったら、論文を書いて模式標本を収め、論文が出版された時点で新種が誕生します。
 どんなふうに名前を決めるかの例として、作者がこれまでに命名したハエトリをいくつか紹介します。
ミカヅキハエトリ
沖縄県の先島諸島に生息。オス (左) の頭の、黒地に白い「C 字」の模様が、夜空に輝く三日月を連想させることから命名しました。
マスラオハエトリ
鹿児島県の奄美大島や沖縄県の沖縄島に生息。オス同士が取っ組み合いの激しい闘いをすることから、「血気盛んな闘う男」を意味する「益荒男」を当てました。
ホムラハエトリ
沖縄県の石垣島に生息。鮮やかなオレンジ色が炎を連想させることから、「炎」を意味する「ほむら」を当てました。
 
 
名前を考えるのはとても楽しい時間です。
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